佐藤 あり紗
| Episode1 |
― 2018年に日立リヴァーレを退団して、最初にやりたいと思ったのは地元である仙台への恩返しでした。学生時代から何度もバレーボールを辞めようとしてきた私をその都度支えてくれたのがチームメイトや指導者、それに地元の方々だったんです。みんなの励ましがあったらこそ踏みとどまれた。代表にも選抜されたし、オリンピックも経験できた。いまの私があるのは仙台のおかげといっても言い過ぎではありません。だから今度は応援する側に回りたい。バレーボールで地域を盛り上げていきたい。
そんな思いで地元に戻ると、タイミングよく仙台でVリーグ加入を目標とした新しいチームが創設されるという話が。個人的な活動も両立できるとのことで『リガーレ仙台』の立ち上げに参加しました。いまはチームでの選手兼監督という活動のほかにバレー教室や、みやぎ交通安全広報大使、地元のCM出演、講演会、そして地元の飲食店や観光地をSNSで発信しています。
これまでバレーボールひと筋の人生を歩んできたので、講演活動とか情報発信などやることなすことはじめての取り組みです。多くの人の前で喋るのも得意じゃありません。だけど声をかけていただいた以上、やらないよりやるほうを選ぶ。不器用ながらもチャレンジしている私の姿を見せることで、誰かの頑張るきっかけになりたい。そんなふうに思って奮い立たせているんです。
確かに不安に感じることはあります。そんなときこそ感謝の気持ちを思い出す。そしてまずやってみよう、と。上手くなくてもいいから自分らしく。自分らしさがあればそれがオリジナルな取り組みになるはずだ、と開き直りつつ挑戦を続けています。
リガーレの監督を打診されたときも、最初はお断りしたんです。ただ、他の選手が競技を辞めて監督に専念しなくちゃいけなくなるぐらいなら、と引き受けたんです。いままで考えたこともない監督業ですが、せっかくやるならその立場からもいろいろ学ぼうと思いまして。いま資格取得に向けて準備中です。
| Episode2 |
― 宮城県をスポーツの力で盛り上げていく中でいま最も力を入れているのが『2個バレーボール大会』です。今年で2年目になるのですが、24チームの出場枠に対してなんと45チームからのお申し込みがありました。特に大々的なプロモーションをやっていないのにここまでエントリーが増えたのは、昨年参加された方の口コミの力だと思います。本当にありがたいですね。「次回は2日間開催にしようか」とか「午前と午後で分けてもいいね」なんていまから来年の話で盛り上がっています。
2個バレーボールって文字通りボールを2個使って1本目で返球する競技なんですが、もともとは日本代表のときのアップでやっていたんです。そのときにこれは周囲のメンバーとのコミュニケーションを深めるのにぴったりだな、って思って。私、人見知りなのでずいぶんと救われたんです(笑)。それで、いつかこれを大会にできたらな、と思うようになったのがきっかけです。ジャンプをしないので膝を悪くすることもないし、初心者でも年齢性別も関係なくできる。家族みんなで楽しめるスポーツって素敵ですよね。
ルールも小学生でも楽しめるようにアレンジ。また昨年参加された方のご意見なども参考にしてブラッシュアップを図っています。ゲームも大会も育てている感覚ですね。回を重ねるごとに洗練させていきたいです。将来的には全国各地で大会を開けるようにして、全国大会はもちろん宮城で。去年も今年もコロナの影響で宮城県在住の方のみが対象なんですけど、少しずつ参加者の輪を広げるつもり。
そのためにも私自身の発信力をもっと高めていかなくては、と思っています。Twitterやインスタグラムをフォローしてくださっている方が増えてはいるのですが、個人的にはまだまだだなと。ひとつのことに集中して投稿すれば増えていくということはわかってはいるんですけど、活動範囲が広いので分散しちゃうんですよね。とはいえ私らしさは失いたくないですし…いまそのあたりを研究しつつ、改善に向けて試行錯誤を繰り返しています。
| Episode3 |
― これまでで最も大きなチャレンジは大学3年生でポジションをリベロに変えたことですね。いまにして思えばここから人生が大きく変わった気がします。もともとは保育士になりたかったのでバレーボールは大学までのつもりでした。だからこそ最後はチームに貢献したくて、自分の身長と身体能力を活かせるリベロに挑戦。それまでのスパイクを封印してレシーブ一本でひたすら練習を積みました。
もちろん不安でした。アスリートにとってポジションを変えるのは勇気もいりますし、退路を断つ覚悟も必要です。だけど、結果としてそのおかげで実業団にも入れたし、全日本女子にも選抜されました。あのときのポジションチェンジを受け入れてくれたチームや監督には感謝しかありません。
しかも保育士になりたかった夢もバレー教室に形を変えてほぼ叶っています。大好きな子どもたちに大好きなバレーボールを教えているとき、ああ好きなことが同時にできているなあ、幸せだなあって実感するんです。
だからいま、長きにわたる選手生活の中で最も充実した毎日を送っています。すべての原動力は感謝の気持ち。そしてご縁を大切にすること。謙虚さも大事ですね。謙虚であればやったことのないことでも勉強させていただく、という姿勢で向き合えば何か必ず得られるはず。おかげでこの先もたくさんの新たなチャレンジが待っています。
なにかにはじめてチャレンジするときって、不安ですよね。勇気もいるし、覚悟も必要です。だけど人生は一度きり。ありきたりな言葉かもしれないけれど、やらないよりやっていろんなことを感じたほうがいい。楽しいことばかりじゃなくて、苦しいこともあるけど、やらないより得るものはたくさんあるはず。すぐに周囲から共感してもらえるとも限らないけど、地道でも続けていれば応援しようと思ってくれる人、きっと出てきますからね。
チャレンジしたいことがあれば口にして、勇気を出して、楽しむこと。そして手を貸してくれる人や仲間を大切にして、感謝の気持ちで恩返しすること。このスパイラルがまた誰かの何かのきっかけになり、広がっていく…そんな大きな円環を地元のみんなで描いていけるといいなって思っています。
Feb 03
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